忘れられるはずがない

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……雨の中、取り立ての免許、云千万の高級車。 俺は彼女と友人たちに自慢したくて乗せてやった。 おまえたちと仲良くしてやって、こんな高級車に乗せてやってるんだぞと。 外は土砂降り、車内は爆音と彼女と友人たちのバカ笑いに充ち、気分は雨でも上場だった。 食べこぼしも今日だけは許してやる。 そう愉悦に浸っていた瞬間、視界の悪い道を照らしていたライトが黒い影を浮かび上がらせる。 人? 俺には女性に見えた。 ヤバいとブレーキを踏み、ハンドルを切ったが酷く鈍い嫌な衝撃音がした。 「きゃあ! 」 「うわ! 」 止まると同時に、パニック状態の彼女と友人たちの状況確認もせず、雨の中に慌てて飛び出す。 ……ぶつかった衝撃を感じた。確実に誰かを撥ねた。そこには、人所か動物1匹すらいなかった。 だが、暗くても薄らとわかる。ライトに照らされながら雨に流される多量の血水が見えた。 「……もう、なーに? 何もないじゃない。急に止まるからビックリして頭打ったー! 最悪」 その声にハッとする。 助手席に座っていた彼女が傘を差し、半ば怒りながら隣にやって来ていた。 彼女には血は見えていない? もう1度見ると血水は土砂降りの雨に洗い流されていた。 ◆◇◆◇◆◇◆◇ ガバッと起き上がる。酷い汗を掻いていた。 「……またあの夢か」 あの日から十年。あれを切っ掛けに彼女と別れ、あの時の友人たちとは縁を切った。車も買い替えた。 毎日ニュースや新聞など探し回ったが、それらしき記事は見当たらなかった。 俺は怯え続けた。訴えられでもしたら勘当だけでは済まない。今時、息子の不祥事を揉み消してくれる親など稀だ。金があればあるだけ自分が可愛いのだから。むしろ、一般人の家族の方が情がある。 「あと5年……。って、何言ってるんだよ」 俺は頭を抱えた。 罪から逃れたいのか? 逃げたい気持ちはある。でも……、償いたい気持ちも少なからずあるんだ。
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