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「彼女は? 心配って言わない?」
「……言ってる、かも」
「愛してんねぇ。愛されてんねぇ。アオハルだねぇ」
どこかの中年オヤジのように突っ込むクラスメイトの言葉に、相槌を打って、「羨ましいなー」と声を出すのが、正解だったのだろうか。それとも「彼女、大事にしてあげなよ」としっかり者のお姉さん役として言うべきだったのだろうか。
けれど、その時の私は何も言えなかった。
「彼女のどこが好き?」
「どれくらい付き合ってんの?」
クラスメイトが健太郎の肩を抱き、話しかけながら、廊下を歩いていく。
私の足は動かず、その場で固まるだけだった。
ひんやりとしたコンクリートでできた廊下の上を歩いていく二人の背中を見つめながら、私は自分の心の奥に芽生え始めていた気持ちに気づいてしまった。
私、健太郎のことが……
好き、なんだ……。
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