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神社の近くに川がある。岸には背の低い笹竹がびっしりと生い茂っている。水量は少ない。渇水のせいだろうか。
取水口らしきものが向こう岸に作られており、そこだけは水が流れていて、川を横切るように水が通されている。
武士は涸れた川を渡る。
土手を越えると、大きな沼があった。水はここから引いてきているのだ。
岸辺には篠や葦が密生している。根元に白いものがチラチラと見える。それが人骨だと判るまでに少し時間を要した。この沼で、大量に人が死んだらしい。
「沼のヌシよ! なぜだ! なぜ殺したッ?」
「うぬは虚けか」
篠の茂みの向こうから、声がした。武士は咄嗟に槍を向けたが、そいつは身構える暇もないほどの速度で走ってきて、槍を弾き飛ばし、武士を押し倒した。
老婆だった。
その顔には、びっしりと巻き貝がついていて、手には大きな爪が生えている。色鮮やかな着物を身にまとっている。神社にあったあの着物と似ている。
「呪いの恐怖を味わい、なおもこの沼に参るのか」
「わしは平治の激戦とて怯まずに突撃した」
武士は反撃しようとするも、老婆の怪力に易々とねじ伏せられる。金具を噛みちぎられ、鎧は剥かれ、武士の喉が露出する。
「沼の水は、民に必要だった!」
「人の道理など知らぬわ」
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