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「鳴りを潜めておったのはなぜだ? なぜ、立て続けに呪ったッ?」
「わしを目覚めさせたのは、ぬしら人間ぞ」
「なんだと――?」
武士の豪毅な面構えが解け、驚愕の面持ちに変わる。なにかの真実に辿り着いたのだろう。
「……その顔、まさか」
答えを返すこともないまま。
老婆の爪が、武士の喉笛へと振り下ろされ――……、
……――白昼夢は終わった。
室内に僕は立っている。
マンションの一室。無地の壁に、灰色の天井。ベッドとパソコンとデスク。クローゼットも冷蔵庫も据えつけ。必要なものは並べられ、無駄なものは一つもない部屋。カーテンの隙間から見える空は仄暗い。
ここは僕の部屋。独り暮らしをしている。
スマホをだして、ある番号にかける。七コール待った。
〔……陸! ……ぉ、まァ……おまああああ! 何時だコラァ、言ってみろ!〕
眠たげな雄叫びが聞こえてきて、言外に遺憾の意を表明している。
「見えたら電話しろ、つったのおまえだろ」
「――見えたのかッ?」
ぶぼ、という音がスピーカーから聞こえた。布団をひっぺがして起きたのだろう。
白昼夢の概要を話す。相手は、僕がこういう奇怪な白昼夢を見ると知っているから、見たままの内容を話せば済む。
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