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語り終えると、電話の主は大きな溜め息をついた。
〔巻き貝ときたか〕
「あんまり真面目に捉えるなよ。どうせデタラメな内容だし」
〔当たっていることもあったじゃねえか〕
たしかに僕の白昼夢は、無視できないほどのリアリティを持っている。
〔夢を持ち続けるのも、才能の一つだぜ? 陸ちゃん〕
「ちゃんづけやめろ。僕は男だ」
僕はテレビのリモコンを手に取った。朝のニュース番組をつけておく。
〔石碑ってのが気になる。ちょっと絵を描いて送ってくれ〕
僕はスケッチブックに絵を描くと、スマホで撮影してパソコンのアドレスに画像を送りつけた。相手はスマホを持っていない。いまは家電で話している。
通話相手はしばらく考えこんでいたが、ぽつりと言った。
〔板碑だな。仏教の供養塔でな、鎌倉時代あたりから盛んに作られた。刻まれている文字は梵字だ〕
こいつの特技は、人力検索エンジン。
古代や中世の日本史や考古学にかけての知識なら、検索せずにすらすらと口からだしてくる。
たとえば古墳なら、名称や地理みたいなメインの情報だけでなく、作られた時代、見つかった年代、出土した副葬品の一つ一つまで覚えている。凄すぎないか?
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