第一譚 猫目と武士の白昼夢

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〔板碑は災害、疫病、戦争――色々な理由で大勢が死んだとき、その霊を鎮めるために造られる〕 「大勢の死……」  僕は白昼夢を思いだした。あの老婆が言っていた。 『呪いの恐怖を味わい、なおもこの沼に参るのか』  もしかしたら呪いで死んだ者たちの供養かも。 〔形が特徴あるな。下に知っている本がいそうだ。捕まえるからちょっと待て〕 「本を擬人化するな」  こいつはちょくちょく、本を人に喩える。本の個性を尊重しているんだろうけど、幼げすぎるその行為は、ガタイのいい本人の見た目からミスマッチしている。  かっこつければモテるんだから、かっこつければいいのに、ちょくちょくこういうところがあるからなあ。 〔あった〕 「なにが?」 〔…………うぇー……〕 「なんでえずいてるんだよ」 〔画像を送ろうとしたらさあ、ネットなる文明の利器を使わなきゃじゃんか。さっきのメールもイヤだったんだけど、いまキーボードに触れると祟りがありそうで〕 「おじいちゃんか!」 〔違うんだよ。ネットをしているとき、ディスプレイの周りに漂う空気が……いや、空気じゃないけど、グロくて〕 「不思議なワールドを展開していないで、さっさと送れよ」  スマホが鳴る。画像を送ってきた。  開いてみて、息が止まるほど驚いた。     
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