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白昼夢で見た石碑と、まったく同じ形のものが写っていたからだ。細部が削れ、折れるように割れていて、かなり修復されているけど、経た月日を考えれば妥当な変化だと言える。
〔川辺の板石塔婆。文永八年造立。埼玉県桶川市にある板碑で、文化財に指定されている。似てるだろ?〕
「似てるどころじゃない。完全に、そのものだ……」
白昼夢の内容から、こいつが場所を割りだしたのは初めてじゃない。相変わらず異常に勘が鋭いヤツだ。
『桶川市でまた痛ましい事件が起きました』
テレビから流れてきたニュースにも、桶川市という単語が重なって、僕はテレビに目を向けた。
『警察は連続殺人事件に関連があるとみています』
キャスターが、ゲストたちと会話を始める。
『女子高生の入水自殺もこの近くなんですよね?』
『事件の三週間前ですか。神隠しと騒がれた事件ですね』
『現地では祟りなんじゃないかって噂も立っているそうで』
「……おい。テレビつけろ」
〔あん?〕
「早くつけろ! ゆうべ一緒に見ていた局だ」
〔ん。これ……〕
相手も同じニュースを見たらしい。黙りこんだ。
ニュース映像に、川辺の板石塔婆が写されている。
〔ちょくちょく見たニュースだな。桶川市だったか〕
「猟奇連続殺人……」
テロップには『遺体にはまた爪痕が!』という言葉がある。
〔こいつが犯人だ〕
「どいつ?」
〔あやかしだよ。爪があったんだろ?〕
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