分からないこと

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 ミステリアスという言葉はとても便利なもので。その響きに騙されて、大抵の女子の頭の中では魅力的という位置にある。  ようは、何を考えているか分からない、という意味だ。  「好きです」と今まで何度か言われたことがある。知っている女の子や、知らない女の子。別に嫌いなわけでもなかったから、「そっか」とだけ答えた。  告白という一大行事に舞い上がった少女たちは前向きで、その「そっか」という一言に何の感情もこもっていないことにも気付かなくて。「付き合ってください!」と顔を真っ赤にして続けるのだ。 「……別に、俺は好きじゃないんだけど」  そう一言、柚木は呟いた。  冷たいと思われるかもしれないし、実際にそう言われたこともある。けれどこうでも言わなければ、諦めてくれない女の子が多いから、仕方がないとも思う。 「それでも良いです!試しに付き合ってみてください!」  諦めないどころか、ごく少数ではあるけれどそう言ってくるたくましい女の子さえいる。  そこまでくると、素直に凄いと思うのだ。ここまで冷たくして、それでも自分と付き合いたいなんて。  一体どんな女の子なんだろう。  少しずつ興味が湧いてきて、「良いよ」と言って薄く笑ってみせる。  こんなにまで自分を好きだと言ってくれるなら、きっと。  自分もまた同じくらい好きになれるかもしれないから。
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