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すっと、目が覚めた。
しんとした空気に顔を上げ、はてと首を傾げる。ここは一体、どこだったか。
「……ああ、B組か」
そういえばと思って、ぼそりと呟いた。
いつの間にか、あれほど騒々しかった生徒たちの姿も消えていて。教室の後ろの壁が、赤々と染まっているのが見えた。窓の方を見れば、半分だけ閉じたカーテン。誰が閉めたのか、それのおかげで日の光に晒されず、ぐっすりと眠れたようだ。
柚木は軽く伸びをし、くわりと一つ欠伸を漏らす。
「……っと」
口許を隠すこともなく大口を開けていたら、ふと視線の先に一人の女の子が座っているのが目に入って慌てて手で覆った。別に格好つけるつもりもないけれど、体裁というものはあるわけで。
まあ、こちらを見ているわけでもなく、静かに本を読んでいるだけだけれど。
ちらりと周囲を見れば彼女以外に残っている生徒もおらず、少しだけほっとした。
にしても遅いな。
委員会だと言っていたから、待っていると伝えたのに。
「教室だと思わなかった、とか」
もしかしたら、すでにいつも待ち合わせをしている昇降口の外で待っていたりして。
思えば、恋人の机には勉強の道具一つ入っていない。
まずかっただろうか。
思いながら席を立ち、椅子を机の下に押し込む。教室の扉の方へと足を進めて。
ちらりと視線を向けた先の女の子は、まだじっと本に視線を向けていた。
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