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天界の一角にそびえ立つ、大きなお屋敷。
これは、そのお屋敷に住む小さな神様と1人の女執事による、ちょっと不思議なお話。
「ねえねえ天使(アマツカ)!」
ある夏の日のこと、庭で優雅にホットミルクを飲んでいたお嬢様が、私になにか尋ねてきました。
「どうかされましたか?」
「あのね、今度ヴァルハラ小学校で、夏休みの日記を提出しなくちゃいけないんだけど、上手くできているかどうか読んでほしいのっ!」
「夏休みの日記、ですか」
そういえば私も小さい頃、そのような宿題をやっていたな、となつかしく感じました。
「構いませんよ」
「ありがとう! それじゃあ少し待ってて」
ぴゅぴゅーんっ! という擬音が聞こえそうな程、お嬢様は素早い速度で部屋へ向かい、かわいらしい猫のイラストが入ったノートを持参して戻ってきました。私はノートを受け取ると、早速表紙のページをめくりました。
「それでは、読ませていただきますね」
◆◆
7月22日 (くもり)
今日の天使は、黒のひもパン!
◆◆
パタン、バサバサッ!。
私はノートをすぐに閉じました。驚きのあまり、普段はたたんでいた翼が飛び出してしまいました。
……心を落ち着けましょう。どうやら今日の私は、少し疲れ気味のようです。
意を決して、危険物を扱う爆弾処理班のように表紙をめくるとそこには太く大きな字で、
今日の天使は、黒のひもパン!
ふむ……おかしいですね。
気を取り直してもう一度確認してみましたが、やはりそこに記されていたのは、
今日の天使は、黒のひもパン!
…………沈黙……。
とりあえず私は、お嬢様の真意を確かめるために質問しました。
「ええと……失礼ながらお嬢様。日記のこの部分なのですが、どういった意図でお書きになりましたか?」
対してお嬢様は元気いっぱいの声で、
「あーこれね。日記を書く時は、その日一番印象に残った出来事にするのがコツです! って先生が言ってたから、実践してみたんだー」
と返答しました。
悪意がない分注意しにくいなぁ……。まあいいや、次だ次。
◆◆
7月29日 (晴れ)
今日は、天使が熱でつらそうだったので、勇気をふりしぼって1人で買い物に出かけました。
◆◆
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