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あたしは3を選んだ。
ある朝、あたしはいつものようにランドセルをしょって家を出た。
だがし屋の角を曲がって、学校が見えてきたとたん、ぱたりと足が止まった。
はっきりわかった。
もうこれ以上この先に進むことはできない。
ずり、ずりと後ずさりをした。こっちの方向だと、足はかんたんに動く。
そのまま、くるりと回れ右でどんどん歩いた。
家にはもどれない。明け方に帰ってきたおとうさんが、干物みたいな顔してねているから。
そこで、近くの団地の公園に行った。だれもいない。
ブランコに座った。
丸い時計が8時半をさすと、遠くで学校のチャイムが聞こえた。
もう、みんな自分の場所に着席して、朝の会が始まるのを待っているだろう。あたしのイスには、どんなねばねば物質がのっているだろうって、ちょっと考えた。
なんでもいい。あたしはもうそこへは行かないんだから。
「あら」
とつぜん頭の上で声がして、あたしはブランコから立ち上がった。
おかあさんらしい人たちが、入り口に四、五人かたまっている。みんな、それぞれに黄色いぼうしの小さな子を連れていた。公園の前は、ようち園バスの集合場所らしい。
おかあさんたちは、みんなそろってあたしを見た。
そのうちの一人が、足を一歩ふみ出す。日ごろ、おかあさん仲間のうちでは、勇気があると思われている人だろう。
でもまあ……めいわく。
「あなた、学校は?」
続いて、他のおかあさんも口を開く。
「おなかでもいたいの?」
「ちこくよ、ちこく」
「忘れ物?」
全員がこっちに来ちゃいそうな勢いなので、あたしはあせった。
「今から行きます!」
方向もわからず、公園から飛び出す。
ランドセルが背中でがちゃがちゃあばれた。
太陽の光は強くなって、せみが鳴きはじめた。
まったく、いつまで夏なんだろう、と思った。
アスファルトの道路にあたしのかげが真っ黒に落ちていた。かげもあたしにつきあって、ふらふら知らない町をさまよい続けていた。
ものすごくのどがかわいた。二リットルのコーラだって、一気飲みできるくらい。
さっきの公園のフラミンゴ型の水飲みを思い出した。思い出したって、もっとのどがかわくだけだ。
おでこやほっぺを汗が流れて、かゆくてしょうがない。
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