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ここからは姿が見えず、男の子の声だけが聞こえる。
「門の前にいたから一緒に来た」
口調からして、今喋ったのが寺田さんの従兄弟かな。
「こんにちは」
また知らない声。
彼が、もうひとりのルームメイトだろう。
「待ってたよ。入ってー」
「お邪魔します」
足音がこっちに向かってくる。
心臓がバクバクと音を立てた。
俯いている私の視界の端に、足が映る。
「あっ、こんにちはー」
その明るい声に、顔を上げた。
「こんにちは……」
この人がきっと、寺田さんの従兄弟。
黒髪短髪で、少し色黒。
スポーツでいうなら、野球が似合う人だと思った。
彼に続いて入ってきたもう一人の男の子は、私を一瞥した後、私の斜め向かいに座った。
あれ……挨拶……。
私からした方がいいかな……。
「あの……はじめまして」
同い歳くらいの男の子に自分から声をかけるのは、初めてかもしれない。
一言そう言っただけなのに、緊張で声が少し震えた。
男の子は私の方を横目でチラリと見て、
「どうも」
とだけ言った。
……仲良くなれる気がしない。
気づかれないように、小さなため息を吐く。
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