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「あとは……――あっ、来た」
寺田さんは、ノックの前の足音だけで訪問者の存在に気づいた。
「わっ、びっくりした」
引き戸の開く音と、その女の子の声が被る。
「ごめんごめん。来たのが分かったから開けちゃった」
「こんなに若いオーナーさんだったんですね!」
とても澄んでいる声。
「そうそう。名前はちょっと古風だからね」
「こんなにかっこいい人だなんて思わなかったなー」
この子、すごい。
私が口にできなかったことを、何の躊躇いもなく言ってのける。
どんな出で立ちをしているのだろう。
早く会ってみたい。
リビングに来るまでの数秒間がもどかしい。
「よしっ。これで全員集合」
女の子が、寺田さんの後ろからひょこっと顔を出した。
その子を見て、私は思わず唾を飲み込む。
きっと、他の2人もそうしたと思う。
だって――
「かわいい……」
思わず出た心の声に、無口な男の子だけが、ちらりと私を見た。
「はい、みんな座って。とりあえず、自己紹介から始めよう」
「はーい」
私はその女の子を思わず目で追う。
座る時に、着ているワンピースの裾がふわりと揺れた。
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