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「まず俺から」
寺田さんが正座をする。
それを見て、私は背筋を伸ばした。
「寺田恭平。大学1年です」
私より3つ上。
やっぱり、若いオーナーさんだ。
「いい大学に入るために、高校生のときは勉強しかしなかったんだ。正直、思い出とかほとんどなくて。だから、受験勉強から解放された今、何かワクワクすることがしたいって思って、民宿を始めました」
したいことを実際に行動にうつせるのはすごい。
この家は借りたのかな。
「ここは元々じいちゃんとばあちゃんが住んでたんだけど、昨年、病院が近くにある方が安心だからって、都会に家を借りたんだ。で、空き家になってたここを、就活が始まるまで限定って条件付きで貸してくれることになった。あっ、ちゃんと民宿する許可はとってる」
確かにここに来るまでに病院らしき建物はなかった。
都会に引っ越した気持ちは分かる気がする。
「って感じかな。またなんか質問あったらしてね。じゃあ次……」
寺田さんが私たちを順番に見る。
「とりあえず洸で」
「とりあえずってなんだよ」
寺田さんの従兄弟がつっこんだ。
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