5人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
ひまわりが咲く頃に
ひまわりの咲く頃になると、僕は決まって一人の少女の夢を見る。
白いワンピースを着た、長い黒髪の少女。
広大なひまわり畑の中で、まっ黄色に咲き誇るひまわりに囲まれながら、いつもニコニコと笑っている。
行ったことも見たこともない景色なのだが、どこか懐かしい。そんな気がした。
最初にその夢を見たのは小学5年生の頃だった。
自分の背丈ほどもあるひまわりの中を駆け巡りながら大空に広がる入道雲を追いかけていると、ふいに誰かとぶつかった。
ころん、と転がる僕の前には、白いワンピース姿のその少女がいた。
同い年くらいの女の子。
目鼻立ちのはっきりとした、美少女だった。
その子は、きょとん、としながら僕を見つめていた。
「あ、ごめんなさい……」
慌てて謝る僕に、その少女は驚いた顔を見せながらも手を差し伸べてくれた。
その手をつかんで、僕は立ち上がる。
少女は、何も言わなかった。
ただ、ニコニコと笑いながら僕を見つめている。
不快な感じはまったくなかった。
むしろ、ホッとするような安心感があった。
「あの……」
誰ですか?
問いかけようとした矢先、目が覚めた。
時間にすれば、ほんの数分の夢だったと思う。
けれども、その夢は強烈に僕の頭に焼き付いて離れなかった。
最初のコメントを投稿しよう!