ひまわりが咲く頃に

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 僕は迷うことなく電車に飛び乗った。  時間にして1時間30分の距離。  夢で見たひまわり畑は、紛れもなくあの場所だ。  なんの偶然か。  たまたま目にしたテレビ番組であの場所が映るとは。  行ったからといってどうなるわけでもないが、僕はすぐにでもあの場所を訪れたかった。  電車は、ガタンゴトンと小さく揺れながら目的地へと突き進んだ。  決して多くはない家々が建ち並ぶ町並みが次第に途切れ、山や川や田園風景が広がっていく。  予想以上に、何もない。  そんな中、電車はくつわ町へとたどり着いた。  無人の駅を降り、辺りを見渡す。  タクシーどころか、バスすらない。  僕は近くの看板を見ながら、くつわ町ファームを探した。  ところどころ剥がれがかった看板には15年前にできたくつわ町ファームの名称はどこにもなかった。  ただ、比較的新しい小さな立札が、その脇に立っている。  くつわ町ファームの方向を示していた。  ここから5キロ。  近くはないが、歩いて行けなくもない。  僕は、立札を目安に歩き出した。  幸いにも、立札はいくつかの間隔で立っている。  そのため、僕は迷うことなく突き進むことができた。  空の入道雲が、夏の暑さを象徴している。  しかし僕のはやる気持ちは、その暑さをものともしなかった。
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