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しばらく、お互いに声を発さなかった。
ただただ、顔を見合わせているだけだった。
「ようすけ」
初めて口を開いたのは彼女の方だった。
「ひなた」
「どうして、ここに?」
「ローカル番組を見てたら、ここが映ってて。夢で見た景色と同じだったから……」
じり、と近づいて来るひなたに、ビクッと肩が震える。
「ようすけ……」
つ、と彼女の瞳から涙が流れ落ちた。
「ずっと……ずっと、会いたかった……。1年に1回、ひまわりの咲く頃じゃなく、毎日」
「ひなた」
彼女の言葉に、僕はとんでもない思い違いをしていたことに気が付いた。
僕が邪魔だなんて、彼女が思うはずがない。それこそ、僕のひとりよがりだったんだと。
「ここに来れば、いつか会えるんじゃないかって。ひまわりの咲くこの時期なら、いつか来るんじゃないかって。いつも思ってた」
「ずっと……待っててくれてたの?」
「この時期だけだけどね」
僕は、嘘だと見抜いた。
きっと彼女は、秋も冬も春も、一年中ここで待っていたに違いない。
「ごめんね。10年以上も待たせちゃったね」
「ううん。来てくれたから、いい」
僕はそっと近づき、彼女の目から零れ落ちる涙を指でぬぐった。
「ようすけ、そういえば夢の続き……」
「あ……」
ひなたに言われて思い出した。
夢の中では彼女が僕の涙をぬぐっていた。その光景がまざまざと思いだされて僕の心を熱くする。
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