ひまわりが咲く頃に

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 その淡い期待が現実味を帯びてきたのが次の年のひまわりの咲く頃だった。  いつものように、唐突に始まる夢の続き。  目の前にいるひなたは、だいぶ成長を遂げていた。  対する僕は、まだ声変わりもしていない。  ひなたは、僕の姿に安心したかのような笑みを浮かべていた。 「ようすけ……」 「ひなた」  1年ぶりに会う彼女は、満面の笑みを浮かべながらもどこかよそよそしく、伏し目がちで目を合わそうとしなかった。 「あ、あの、ようすけ。こ、この前、言おうとしたことなんだけど……」  しどろもどろになりながら精一杯言葉を紡ぐ彼女。  僕の顔をチラチラと確認している姿がとても可愛らしく、僕は思わず抱きしめたくなってしまった。 「え、と……。その……」  なんと言っていいのかわからない顔をしているひなたが可哀そうで、僕のほうから切り出した。 「僕たち、お互いに同じ夢を見ている気がするね」  その言葉に、しどろもどろだった彼女の顔がまぶしいほどに輝く。 「そう!? やっぱり、そう!?」  グイ、と身を乗り出してくるひなたに、思わず腰が引ける。  半信半疑ではあるが、そう結論づけなければ納得がいかない。  何より、彼女もそう思っている。  これは僕だけの妄想ではなさそうだった。 「実はね、わたし朝起きた後、胸がドキドキしてるの。もしかしたら、お互い同じ夢を見ているんじゃないかって。でも、そんなことあり得ないし。かといって、夢で済ますにはどこか現実的で……」 「なんなんだろうね、これ」  そう言う僕に、ひなたはポロポロと涙を流しはじめた。 「え、ええ!? いや、なんで!?」  慌てふためく僕を安心させるかのように彼女は笑って言った。 「ほんと、なんなんだろうね、これ」  安心したかのようなひなたの泣き顔が、僕にはとても愛らしく感じられた。
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