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それから毎年、僕らは互いにひまわりの咲く頃になると夢で出会うようになった。
年に一回。
それも何の前触れもなく唐突に。
僕らはいつ会ってもいいように、1年間の出来事をまとめて話す癖を身に着けた。
いつ目覚めるともわからない夢の中。
片方がしゃべると片方が黙ってそれを聞き、それが終わると今度は逆に。
交互にお互いのことをしゃべり合う。
そんなルールも決めた。
まるで、近況報告のようなものだったが、それでも年に1回会える彼女がまるで現代の織姫のようで僕の心は躍った。
不思議なことに、お互いの名前以外、住所や電話番号などの個人情報の類だけは教え合っても目が覚めるとすべて忘れていた。
そのため、ひなたがどこの誰なのか、どこで何をしているのか、さっぱりとわからなかった。
そのせいか、彼女に対する特別な想いは年を重ねるごとに強まって行った。
「会いたい」
どこにいるのかわからないからこそ、無性に会いたくてしょうがなかった。
全国各地のひまわり畑の情報をあさるも、夢に出てくるあの場所はいっこうに出てこなかった。
あの場所はどこなのだろう?
なけなしの金を握りしめ、いくつかの場所を巡ったこともある。
しかし、どの場所もあの夢の場所ではなかった。
そもそも、夢の中のひまわり畑なのだ。存在する場所とは限らない。見たこともないところなのだから。
そう思うと、よけい辛かった。
彼女とは夢の中でしか会えない。
夢の中でしか声を聞けない。
それがなにより辛かった。
僕は、決心した。
次の夢で告白しよう、と。
夢の中でしか会えないのだったら、夢の中で想いを伝えるしかない。
そしてその夢は、今後も続くとは限らない。
ならば、後悔のないようにしたかった。
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