ひまわりが咲く頃に

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 今年も、ひなたと夢の中で出会った。  相変わらずの白いワンピースだったが、落ち着いた大人らしい雰囲気を醸し出していた。  いつも以上の彼女の姿に、僕の心臓が高鳴る。 「ようすけ」  ニッコリと微笑む彼女の姿がまぶしくて、それが余計僕の心を締め付けた。 「ひなた……」 「一年ぶりだね」 「う、うん、そうだね……」 「元気だった?」 「うん。ひなたは?」 「わたしも」  今年の彼女は一段ときれいだった。  そんな姿に、僕の中でどうしようもない気持ちがあふれ出る。 「ひなた……あのさ……」 「なに?」 「その……」  ゴクリと唾を飲みこむ。  告白したい。  好きだと言いたい。  でも、出来なかった。  ニッコリと微笑むその顔を、曇らせたくはなかった。  僕は頭を振った。 「う、ううん、なんでもない! じゃあ、今年あった出来事、僕の方からするね!」 「うん」  僕は、今年あった自身の出来事を淡々と述べていった。  話してみて、改めてわかった。  僕のしゃべっている内容は、当たり障りのない普通のことばかり。  どこそこに就職活動に行っているとか、有名なパンケーキを食べに3時間も並んだとか、あの映画を観たとか。  そんな他愛もない内容を、ひなたは 「うん、うん」 と真剣に聞いてくれていた。  その真剣さが、逆に僕の心を苦しくさせた。
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