ひまわりが咲く頃に

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「ようすけ、泣いてるの?」  気が付けば、僕は泣いていた。  目からどんどん涙があふれ出ていた。  他愛のない話をしながら涙を流していた。 「う、うん、ごめん」  僕は涙を拭った。  恥ずかしい。  1年ぶりに会えたというのに、みっともない姿を見せてしまった。  それなのに、いくら拭っても涙が止まらなかった。 「あれ、なんだろ。涙が止まらないや。ごめんね」  謝りながら涙を拭い続けていると、突然ひなたが手を差し伸べてきた。 「……?」  それはごく自然に、僕の顔まで伸びてきて、涙で濡れる目のふちをぬぐった。  そして、その指をきゅっと握りしめて、ひなたは聞いてきた。 「どうしたの? なにか……あった?」  優しげな彼女の表情。  一点の曇りもないその瞳に、僕は思った。  ああ、やっぱり。  僕は彼女のことが好きでたまらない。  告白しないなんて選択肢はあり得ない。  そう思うと、何か吹っ切れた。  告白しよう。  今がチャンスだ。  僕は彼女の手をつかむと、首を振った。 「ううん、大丈夫」 「ほんと?」 「うん、ほんと。それよりもひなた。どうしても君に伝えたいことがあるんだ」 「伝えたいこと?」 「聞いてくれる?」  緊張した僕の声に何かを察したのか、彼女が黙り込む。  目を見開き、じっと見つめるその顔が、なぜか僕に勇気をくれた。 「ひなた、僕は君の事を、心から……」  ハッと目が覚めた。  気が付けば、いつもと同じベッドの上。  涙を流しながら、天井を見つめている。
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