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血の気の引いた顔をして横たわったままの奴は、何の反応も示さない。
急に怖くなった。間違いなくいつもと変わらずに来るはずだった明日が、真っ黒に塗りつぶされた気がした。
「一緒に行きますっ」
転がっている奴の鞄を掴み、俺は救急車に乗せられようとしている奴に駆け寄った。状況がよくわからないから、奴が一体どういう状態なのかもよくわからない。よくわからないけれど、どうしてもそばについていたかった。
病院についてすぐ手術が行われ、それから数日たったけれど奴は起きては来なかった。いつ意識が戻るか分からないと聞いてはいたが、俺は毎日毎日奴の所に通い続けた。
今日こそは、今日こそはと思いながら。
奴は毎日こうやって俺のことを待っていてくれたんだな。不意にそう思った。状況は違うけれど、待ち合わせ場所になかなか辿り着くことのできない俺を、奴は毎日毎日待っていてくれた。
大丈夫と言い聞かせる気持ちと不安がない交ぜになって、何度も逃げ出したくなった。それと同じ気持ちを奴はずっと味わっていたんだと思うと遣る瀬無かった。
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