今日、君に会いに行く

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 いつもどんなに遅くなっても、この待ち合わせ場所に来てくれた。こんな、誰かを連れて、何かを試すような事を、ましてや浮気かと疑わせるような態度を、俺を前にやる事など、過去一度たりともない。  社交的な彼が羨ましくて、だけどいつも寂しかった。それを伝えたことはないけれど。  今日は俺と出かける約束をしてるとか、積もり積もった言いたいことは山ほどあったのに、俺は彼が大好きで、嫌われたくなくて、それでも我慢できなくて 「二度と会わない、ばかやろうっっ」 と、子供のような捨て台詞を残していつも二人で帰った道を一人で駆けた。後ろから何やら慌てたような声が聞こえて様な気もするけれど、一切振り向かなかった。  ぐじぐじとした気持ちのまま、とぼとぼと歩いていた俺は、それでも先程のことを冷静に考えていてやってしまったと思った。しかも二度と会わないなんて、勢いに任せて、何、別れ話をしているのだろう。結局は惚れた弱みなのだから遣る瀬無い。  このままどんどんと時が過ぎて行けば、関係の修復は出来なくなるだろう。だから、やっぱり今日、会いに行こう。家は知っているのだから、どれだけ待たされてもいいから今日中に話をしよう。  そう考えるとちょっとはすっきりし、好きな人のことを思う誕生日もまたオツなものかもしれないと、負け惜しみのようなことを考え、彼の家に向かう。     
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