165人が本棚に入れています
本棚に追加
もやもやした気持ちのまま歩いていたからぼんやりしていたのか、それが俺の運命だったのか、今となってはわからないけれど、人通りの多い繁華街の中の歩道を歩いている時、突然
「危ないっ」
と言う叫び声と共に、俺の体は宙に浮いていた。
その時、目に入った大きな大きな夕陽がとても綺麗で目に染みた。
次に襲ってくるはずだった全身への強打による痛みは全く感じる事も無く、大きな衝突音を耳にする事も無く、俺の体は宙に浮いたままだった。
いや、体は地面に寝転がっている。だけど俺はそれを宙から見下ろしていた。
ああ、俺は今日、彼に会わなければいけないのに。もう一度大好きだと伝えたいのに。
強い強い意志がだんだんとおぼろげになって行き、俺の意識はそこで黒く塗りつぶされた。
最初のコメントを投稿しよう!