今日、君に会いに行く

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 気が付いた時、体に違和感があった。  記憶が定かでないにしても、車にはねられたことは覚えている。  当然意識が戻れば体中痛いのが普通だと思うのだが、全くの無痛だったことに違和感を覚えたのだ。無痛と言うより気は付いたが意識は戻っていないようなそんなもどかしい感覚で、かといってお約束の様に自分の昏睡している体を見下ろすような事も無い。  ただぷかりぷかりと空中に浮いているような感覚で、そもそもその景色に懐かしさを感じるものの、見覚えはなかった。  死んでしまったのかと考えてみたけれど、よく聞く三途の川も無ければお花畑が広がっている訳でもなく、何の変哲もない普通の田舎の景色が広がっていた。  道の脇に立つ道路標識も見覚えのある形で、これで右が三途の川、左がお花畑なんて書かれてたら納得だけど、普通に地名が書かれている。  何となく見覚えのあるその地名は、母方の祖母の家に昔行ったときに見たような気がする。幼い頃に亡くなった祖母にこのままいけば会えるように思えるくらいにノスタルジックな風景だった。  不意に景色が変わり、夕焼けに染まる空を背景に小学校が現れた。これは覚えている。     
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