167人が本棚に入れています
本棚に追加
低学年の時、仲が良かったリョウ君が転校していくと聞いて、最後にお別れを言おうと放課後に待っていたのだ。結局みんなにもみくちゃにされたリョウ君に、俺はお別れを言うことは出来ず、あの時、自分から会いに行けばよかったと後悔した。
それからはポンポンと風景が変わり、ささやかな忘れてしまったような小さな記憶から、はっきりと覚えているような記憶まで、次から次へと流れていった。
どれもこれもが会いたいでいっぱいで、その気持ちだけが選別されているようだ。
これが俗にいう走馬灯ってやつだと気が付いたのは、ぽんとまた風景が変わり、彼が現れた時だった。
今日、会いに行こう。
強い意識が流れて来て、ぶわっと風に煽られるように一瞬靡いた。
大好きな彼。付き合うことにあった時は、本当に天と地がひっくり返るくらい嬉しかった。
友達の多い彼が、いつ愛想を尽かすかとびくびくしていた。なかなか待ち合わせ場所に現れない彼に、何度もやきもきした。
思えば彼はいつも俺のことを考えてくれていた。どこかに出かけようとなれば行先を必ず聞いてくれ、特に思いつかなければ俺の好きそう、且つ自分のおすすめの場所をさらりと提案し、愛想を尽かすどころかいつもにこにこし優しかった。
待ち合わせ場所に、彼はいつも走って現れた。ごめん、それが毎回毎回一言目だった。だけど必ず来てくれ毎日一緒に帰った。
そんな彼をどこかで疑っていたのは、俺だ。
最初のコメントを投稿しよう!