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不安に思う気持ちは俺だけではなかったはず。俺が不安であればあるほど、同じように彼も不安が大きくなっていったのだろう。
目の前にあの時俺が見ることの無かった彼を好きだと豪語していたあの子との裏話的シーンが流れている。もちろんいいように解釈している部分もあるのだろうけれど、ある程度は真実だと根拠もなくわかった。
「今日も待ち合わせ?」
「ああ」
「ちょっと話する時間もない?」
「悪いな、いっつもあいつ待たせたばっかりだからな。 少しでも早く行きたいんだよ」
「そうなの……待たされてばっかりじゃ、文句の一つや二つ出てくるよね。 じゃ、また明日でいいや」
「……あいつに文句言われたこと、ないぞ?」
「えっ? えー、ありえない。 本当に好かれてるの?」
まるで三文芝居だ。だけど、その三文芝居に乗ってみようと思うくらいに彼は不安だったんだと理解する。
「待ち合わせ場所に一緒に行って彼がどんな反応するか、試してみたら?」
その悪魔の囁きに、彼は「ああ」と頷いた。
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