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そうじゃない。俺は彼のことが大好きで大好きで、ただ一緒に居れるだけでも嬉しかった。ずっとべったりでなくても、これから先ずっとずっと横に居てくれたらいいなと思っていた。
だけど、俺は彼にそのことを伝えたことがない。早く伝えなければ。取り返しがつかなくなる前に、一秒でも早く、彼に会いに行こう。
一生懸命走っているのに足が前に進まない、そんなもどかしくも急いている俺は、彼を探していた。いつもの場所で待っていれば来てくれるような気がしたから待ってみた。だけど彼は現れなくて、代わりに通りすがりの生徒の声を拾った。
「まだ意識が戻らないんだって」
「だから最近授業終わったらすぐ帰るんだね」
「毎日病院行ってるらしいよ」
「早く意識が戻ればいいね。 今度はみんなで話しようよ」
「そうだね。 あの子何も言わないからちょっと僕らいい気になってたよね……」
しんみりした声だったけど、僕は不謹慎にも笑った。認めてもらえたようで嬉しかったから。なんだ、もうちょっと自己主張しても良かったんだ。彼は俺のこと、ちゃんと好きでいてくれたんだ。
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