第三章 老婆

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 大友と黒田は老婆を車の荷台の中に案内した。銀色のシートを取り外すと、女性は綺麗な顔で永遠の眠りについている。老婆は「痛かったろうに、ごめんね」と泣きながら、孫娘を抱きしめた。 「本当にありがとう、大好きよ」老婆は何度も、冷たくなった孫娘の頬を撫でた。  大友がここに彼女を連れてこなければ、老婆はこうやって最愛の孫娘を労わってやることもできず、最後に感謝の気持ちも伝えてあげることもできなかった。  黒田の心中は、いたたまれない気持ちでいっぱいだった。 「どうしても彼女を黙って食料にすることができませんでした」  大友は頭を下げた。老婆は首を横に振り「いいえ。最後に孫娘に会わせていただいて、本当にありがとうございました」と言った。  その後も老婆は荷台の中で、孫娘に寄り添い、思い出を語った。
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