第三章 老婆

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「これから作りましょうか?」  大友の提案に、黒田の表情が険しくなる。大友の肩を掴み、荷台内の隅に引き寄せた。 「さすがに俺も家に帰らないと、まずい。分かるだろ」黒田がささやく。 「分かってる。作るのは俺がやる」 「一人で?」 「そうだ」  大友は老婆に、遺体を埋めて墓標代わりに大きな石を置く、簡単な墓づくりを提案した。老婆もそれで構わないと同意した。 「ここに作るんですか?」  老婆は聞いた。 「いや……。ここは治安が悪い。墓荒しに遭う可能性もある。あの例の丘はどうです?」  老婆にとって願ってもない提案だった。  大友と黒田は老婆から孫娘の遺体を預かった。さらに老婆の家の庭先から大きな石と、原始的な土木道具を譲り受け、車に乗った。 「よろしくお願いしますね」  老婆は大友の目をまっすぐと見た。大友も目を逸らさなかった。 「墓を作ったら、ちゃんと報告しに行きますので」  大友は口元を緩ませ、「では」と、頭を下げた。
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