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「これから作りましょうか?」
大友の提案に、黒田の表情が険しくなる。大友の肩を掴み、荷台内の隅に引き寄せた。
「さすがに俺も家に帰らないと、まずい。分かるだろ」黒田がささやく。
「分かってる。作るのは俺がやる」
「一人で?」
「そうだ」
大友は老婆に、遺体を埋めて墓標代わりに大きな石を置く、簡単な墓づくりを提案した。老婆もそれで構わないと同意した。
「ここに作るんですか?」
老婆は聞いた。
「いや……。ここは治安が悪い。墓荒しに遭う可能性もある。あの例の丘はどうです?」
老婆にとって願ってもない提案だった。
大友と黒田は老婆から孫娘の遺体を預かった。さらに老婆の家の庭先から大きな石と、原始的な土木道具を譲り受け、車に乗った。
「よろしくお願いしますね」
老婆は大友の目をまっすぐと見た。大友も目を逸らさなかった。
「墓を作ったら、ちゃんと報告しに行きますので」
大友は口元を緩ませ、「では」と、頭を下げた。
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