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夜も深まり、交通量はだいぶ減った。丘まで行くにはさほど時間はかからない。
「本当に一人でやるのか?」
「ああ、終わったら歩いて帰れるしな」
「大丈夫なのか?」
「もちろん。その代わり、センターに車を返し、遺体がないわけを説明するのはお前の仕事だぞ」
「分かってるさ」
そんな作業は、原始的な道具を使った墓づくりに比べれば何でもないことだった。
「直帰するが、寂しくないか?」
大友の問いに、黒田は笑った。
丘に着き、遺体と大きな石、そして土木道具を下ろした。
「じゃあ、頼むな」
車の窓から黒田は叫んだ。
「お前も、よろしく頼むぞ」
大友は手を振った。
車は走り出した。黒田は窓にもたれ、一息ついた。その瞬間、ある不可解なことに気が付いた。
サイドミラーには、いつまでもこちらを見つめる大友が写っているのだ。まるでこの車を見張るように……。いつまでも、いつまでも……。
何か言い知れぬ不信感が、黒田の頭の中を過った。
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