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くおんにとって神様と言う生き物は、くおんの人生から久しく不在のモノで、くおんはいわいる罰当たりな人間だった。
くおんは自分はあまり人間だとは思わなかった。どちらかと言えば獣に近くとても本能的だった。
くおんが働く店は米軍基地と港が近く色んな客が来る。
店はあくまでキャバレーで春を売るような場所ではなかったが、くおん個人にパトロンがいた。
パトロンは変わり者の金持ちで、くおんに会うたびにショーガール御用達のレッドソールハイヒールを貢ぐ。
その日は雨で、くおんはパトロンに会いに行かねばならなかった。
好みの化粧、服を着て贈られた靴を履けば派手な成りをしたコールガールが出来上がった。
くおんが住む安っぽい居住区にぴかぴかの車がやって来る。
パトロンは金持ちで自ら運転しないし、美しい華奢なハイヒールを履いた女性を歩かせる事もしなかった。
パトロンは仕事で最近アメリカに行ったらしく、文豪ヘミングウェイが愛したカクテルを出す有名な店に寄ってきたらしい。
くおんの勤める店の名は有名な英国作家の作品の一節で、乱暴なくくりにしてしまえば作家つながりでヘミングウェイの愛したカクテルも手間はかかると言いつつ店で出すのだ。
土砂降りの雨でウィンドウは冷えて吐息で曇った。
パトロンがつげた行き先に人間らしさの部分が嫌だと思う。
高級ホテルの一室だ料金もサービスも恐ろしく高い。
見た目だけなら完全にコールガールだ。入るのも許されないのではないだろうか?この男の考えはよく分からない。
ホテルについて男は正面から入ったが自分は業者入口から入れと言われた。傘をもたず雨に濡れて正面から業者入口に歩けばまとった服はびしょ濡れだった。
男が言っていた部屋に着くとドアが開いてすぐ痛いくらいに手首をつかまれそのままベッドへつれていかれた。
びしょ濡れの服を脱がすより先に丁寧に靴を脱がされた。それから一枚一枚服を脱がされて裸になった。
裸は好きじゃない。自分が何者か分からなくなるから、美しい形をした豊満な胸、細いウエストのヘソの位置が男のそれで下腹の酷い傷、股間に男性器は無い、古い傷だ幼くして無くしたことが分かる。
くおんは美しい顔を歪めて男を非難した。
男は何を考えたか札束を取り出し雨のように降らせた。
本来肌触りの良いシーツは湿っているしくおんの肌も柔く湿っていた。
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