281人が本棚に入れています
本棚に追加
たった今、クライアントさんの話、してましたよね。
どこで、切り替わったのだろう。
複雑な、表現できない、そんな感情を露わにわたしが返答に詰まっていると。
「ただいまー!
あらっ、蓉子ちゃん! 帰ってたの!?」
このみさん登場。
蓉子先生、タバコをくわえたまま、敬礼して。
「はい、ただいま」
「お昼、蓉子ちゃんの分買ってきてないわよ~」
「あら~、じゃあ菊乃のを貰っちゃおう」
「ダメです」
「しょうがないわね、私の少し分けてあげるから」
このみさん一人帰ってきただけで部屋が急に賑やかになる。
バタバタとお昼の準備を始めるこのみさんを見ながら、わたしは緒方君の名刺を手帳に挟んだ。
きっかけ。
遼太を思い出すきっかけには、なってしまった。
でも、別れ際、緒方君がわたしに言った。
『新しい一歩を踏み出す為には、蓋をして見ないフリをするより、ショック療法的に突きつけて嫌でも見つめ直す、というのもありと思うな』
とても意味深なセリフだなって、思った――。
最初のコメントを投稿しよう!