カルテ3 鼓動の封印

7/10
前へ
/32ページ
次へ
 その後は、終始和やかに食事は進み、片付けが終わると、お弟子さん達はちゃんと一日の終わりの挨拶をして帰って行った。  お風呂から上がると、居間で綾乃ちゃんが寝転がってスマホを弄っていた。 「お姉ちゃんはまだ?」  わたしが聞くと、綾乃ちゃんはスマホの画面を見つめたまま答える。 「んー、今夜は遅番だからね」  お姉ちゃんは、看護師をしている。 18の時に綾乃ちゃんを連れてこの家に出戻ってきたお姉ちゃんは、看護師の資格を取った。 それからずっとバリバリ働いて、綾乃ちゃんをちゃんと専門学校まで行かせた。  なんだかんだ言ってもお姉ちゃんは真面目なのかもしれない。 「綾乃ちゃんはまだ寝ないの?」 「寝ないよ。お母さん帰ってくるまでは。 働いてくれてる人、待っててあげないとね~」  相変わらず、スマホでメールを打っているのか、ゲームをしているのか、顔を上げないままの綾乃ちゃんだけど、言葉の中身は優しい娘。 「いい娘ね」  ここで初めて綾乃ちゃん顔を上げた。 はにかむような顔をして。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

158人が本棚に入れています
本棚に追加