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けれど、こんな、酔って吐く女の介抱させて、どうやって、どんな顔して起きたらいいの?
薄目を開けて確認したわたしの視界に映ったのは、緒方君の膝。
どうやら、緒方君には背を向けているらしい。
これ幸いと、わたしはギュッと目を閉じた。
ああ、このまま消えてしまえたらいいのに。
そう思った時、クスクスという笑い声が降ってきた。
「いいよ、そんなに焦らなくて。
気にしなくていい。
翠川さんが少し楽になるまで付き合うからさ」
優しい声。
緒方君は、わたしが目を覚ましていたことに気付いていた。
それでも、わたしがこの状況に気付いて気持ちが落ち着くまで待ってくれようとしてるの?
顔が見られない。
本当は直ぐにでも飛び起きて、ごめんね! って言いたいのに動くのも憚られる。
どんな顔を緒方君に見せたらいいか、分からない。
緒方君の膝の上で、わたしは背を向けたまま身を固くした。
「吐き気は治まった?」
気遣う言葉に、わたしは小さく頷いた。
「よかった。
でももう少し、こうしていた方がいいよ」
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