カルテ5 膝枕

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 声があまりにも柔らかくて優しくて、やさぐれ気味のわたしの心に染みて涙が出そうになった。 でも、ギュッと目を閉じ、涙は堪える。  それにしても、ここはどこだろう。 そう思った時、緒方君が静かに話し出す。 「ここは僕が働いてるクリニック。 この前、翠川さんが来たクリニックの待合室だよ」  わたしはそっと目を開けて、周囲を確認した。 照明は落としていて薄暗かったけど見覚えのある場所だった。 そうだ、ここ……。  急激な覚醒を見たはずだったのに、緒方君の包み込むような優しさに安心してしまったのか、わたしの頭の中はまだどこか薄ぼんやりとしていた。 疑問はどんどん湧いてくるのに。  わたしがどうしてこんなところにいるの? 一緒にいたはずの千尋は?  わたしのそんな気持ちをそっと抱くように緒方君は話しを続けた。 「今夜ね、僕も駅前で少し呑んでたんだ。 そろそろ帰ろうかな、と思って外に出たら、呑み潰れちゃった女の人とそれを介抱する友人、という二人連れがいてね。 傍を通りかかったから何気なく見たら――」  緒方君、クスクス。 ああやだ、そんな。
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