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「あ、ちひろっ!」
顔を覆っていた手を外して身体の向きを変えると、緒方君と目が合った。
非常口誘導灯がうっすらと明るさをくれる待合室フロア。
緒方君のアーモンド形の綺麗な目が、妖しく映ってドキッとした。
起き上がれば、よかったのに。
わたしはそのまま見入ってしまう。
緒方君、フワッと笑った。
「近江さんは、明日の夜にはフライトがあるから今夜、立川駅前から出る成田行き高速バスの最終に乗らなきゃいけないかったみたいだね」
そうだったの?
千尋ったら、何も言わないでわたしに付き合ってくれてたの?
申し訳なさに胸が締め付けられた。
緒方君はそんなわたしにそっと笑いかけた。
「あまり弱音を吐かない翠川さんが心配でたまらなかったみたいだけど、友人に仕事を休ませたら翠川さんは、ますます落ち込む。
そう思って、僕が責任持って、落ち着くまで面倒みて、家に帰すよって近江さんに言ったんだ」
ああ……、とわたしは思わず手で目元を覆い隠した。
みんな、優し過ぎ。
こんなわたしに、二人とも優し過ぎる。
ますます自己嫌悪に陥ってしまう。
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