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泣きそうになるわたしの額に、少しだけひんやりとした大きな手の感触。
緒方君の、手。
ドキン、と胸は跳ねたのに、触れられたそこからすっと強張りかけた心が解される。
もう少し、こうしていて。
そんな風に思ってしまった。
わたしは胸の中に湧いた、自身でも分からない感情をごまかす為に、聞いた。
「どうして千尋は、高校卒業以来久しぶりに会った緒方君にこんなお荷物押し付けたの?」
一瞬沈黙があって、アハハという緒方君の笑い声。
わたしは視界を遮っていた自分の手をそっと外して緒方君を見た。
すると、ドキッとするような優しい瞳とぶつかった。
その目は、反則かもしれない。
見つめられると、動けなくなる。
緒方君、「実はね」と話し始めた。
「2年くらい前に、近江さんがCAとして搭乗していた飛行機に、偶然二回くらい乗り合わせたんだ」
そう言えば、そんな話しを千尋から聞いたことがあった。
『今回のフライトで、誰に会ったと思うー?
緒方君よ、緒方君!
イケメンドクター沢山一緒だったわー』
千尋のその時の様子を思い出して苦笑い。
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