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はいはい、その通りですよ、と思ったけれど、母の言葉を受けて誇らしげな顔をするお弟子さん達の姿を見ると、なんだか悪い気はしない。
みんな、切磋琢磨して頑張っているのよね。
「菊乃にはダイナミックな動きはもう少し抑えてしとやかな動きを増やしてもらいたいものだわ。
その点では、綾乃の方が色気はあるわね」
母の言葉に、一同頷く。
それにはちょっとムッとくる。
媚態を作るのが苦手で、悪うございましたね。
ムスッと黙っていると隣にいた綾乃ちゃんが、ケラケラと笑った。
「だって、菊乃姉はもうここ数年男の人とデートすらしてないから~」
「デートくらいしてるわよ!」
ただ、男の方が勝手に逃げて行っただけ! という言葉は呑みこんだ。
お弟子さん達の忍び笑いが、痛い。
ここは返って明るく笑い飛ばしてもらいたい。
母の手前、笑えないのだろうけど。
「綾乃、はしたないことをこんな場所で言わないの。
菊乃もムキになってみっともない」
母の厳しい声は、ボリュームはないけど迫力はある。
わたしも綾乃ちゃんも、すみませんと素直に謝った。
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