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緒方君は、アハハと笑った。
自分の大切な時間を共有して来た人と話しをすることは心が落ち着く。
でも、緒方君との関係は、そんな、同級生、という一括りで簡単に片付けることは出来ない。
緒方君イコール遼太。
その図式をすぐに連想してしまうから。
落ち着くのに、落ち着かない。
わたしは、いつになったらこのループから抜け出すことが出来るのだろう。
「でもそれは結構上手にごまかしていた印象があるけどな」
「よく御存じで」
緒方君は本当に、遼太とよく通じていた。
わたしの胸に込み上げる甘い記憶。
それ掻き消し、ごまかす為にわたしは別の角度からの話しをする。
「問題行動は、姉がわたしの上を行っていたから、母はわたしの時はもう、学校にちゃんと行っててくれればいい、っていう感じだったわ」
「お姉さん?」
タクシーを待つ列が随分短くなった。
長い話しをすればきっと中途半端なところで途切れてしまう。
「わたしの姉、高校入る前に家出して、子供作って戻って来ちゃったの。
でも、今は姉も働いてるし、その娘もちゃんと成人してるけどね」
早めにこの話しを切り上げられるよう、たくさん割愛した。
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