カルテ6 微熱

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「ドイツね」 「Ya! フランクフルトよ」  ドイツと日本の時差はだいたい7時間。 今こちらが1時だから、あちらは……夜の6時くらい、といったところ。 なるほど、Guten Abend(こんばんは)なわけね。  フランクフルト。 そこは行ったことないんだよな、と自分の記憶のビジョンにない風景を想像しながらわたしは千尋に詫びを入れる。 「ごめんね、この間は。 とんだ失態を。 迷惑かけてしまったわ」  わたしは危うく千尋の仕事の邪魔をしてしまうところだった。 「わたしは全然大丈夫。私より迷惑かけた人がいるでしょう?」  千尋の声がくぐもって聞こえる。 それは笑いを堪えているからだってこと、無料通話アプリを使った国際電話を通してだって伝わってくる。 「はい、緒方君に迷惑をかけました」  千尋にはちゃんと翌日、メールで報告はしてあったけれど。 返信が直電とは。 「なにも、緒方君に預けちゃわなくてもあそこでタクシーにそのまま乗せてくれても良かったのに……」  そう言いながらも、緒方君と過ごしたあの時間に、あまり悪い気はしなかった、という感情が湧く自分に驚く。
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