カルテ6 微熱

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千尋は、そんなわたしの心を見透かしたようにクスクスと笑っていた。 「ごめんね~。でも菊乃あの時寝ちゃってて、タクシーに乗せたって危ないと思ったのよ。 そこに緒方君登場、というわけね。 それに、緒方君ならまあいっかって思っちゃったの」 〝まあいっか〟って。 「ちひろ……」 「良かったじゃない、ホテルに連れ込んだりしなかったワケだし」  そういう問題じゃなくてね。 その、千尋が言う‘まあいっか’がどこに掛かるのか、地味に気に掛かるんですけどね。 「緒方君なら、菊乃にいいかなってちらっと思ったのも事実」  千尋がぽろりと明かした。 わたしの胸が一瞬ドキッと跳ねたけど。 「それはムリ、かな」  少しの間を置いて千尋は。 「もうそろそろ、いいと思うんだけどね」  千尋の言葉はきっと、あれやこれや、諸々のものに掛かっているのだと思う。 彼の事は過去の事と割り切りなさい、っていうことなんだよね。  割り切れたら、どんなに楽か。 割り切れないからまだこんな風にウジウジしているんだから。 「分かんない」
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