カルテ6 微熱

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 曖昧な一言で片づけたわたしに、千尋が小さくため息を吐いたのが伝わった。 「お互い、なかなか進歩しないわね」 「そうね」  そう話してアハハと笑った。  じゃあ、と切ろうとした時「そうだ」と千尋が話しを切り出した。なに? とわたしが続きを促すと。 「実はね、わたしの姉が離婚考えてるの」 「え? だって、千尋のお姉さんのところはすごく円満に見えてたけど?」  そう。千尋の5歳年上のお姉さんは確か……今年で結婚13年目。 子供もいる、絵に描いたような素敵な家族に見えていた。 「それがね、色々あるのよ。 菊乃なら色々なケース見てきたから分かるんじゃない」  そうは言っても。 「わたしはまだキャリアが浅いから、そんなに色んなケースを見たわけじゃないわよ」  そっか、という千尋の声に、もっともっと色んな仕事を熟したい、という熱望が胸に湧く。 わたしはやっぱり、働きたい。 仕事が好きなんだ、ということをこういう時に実感するのだけど。 「でも、なんだかショックだわ。 お姉さんのところまでって思うと」 「私もよ。これから結婚しようっていう妹に、夫婦の現実なんて見せないで欲しいわ」
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