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曖昧な一言で片づけたわたしに、千尋が小さくため息を吐いたのが伝わった。
「お互い、なかなか進歩しないわね」
「そうね」
そう話してアハハと笑った。
じゃあ、と切ろうとした時「そうだ」と千尋が話しを切り出した。なに? とわたしが続きを促すと。
「実はね、わたしの姉が離婚考えてるの」
「え? だって、千尋のお姉さんのところはすごく円満に見えてたけど?」
そう。千尋の5歳年上のお姉さんは確か……今年で結婚13年目。
子供もいる、絵に描いたような素敵な家族に見えていた。
「それがね、色々あるのよ。
菊乃なら色々なケース見てきたから分かるんじゃない」
そうは言っても。
「わたしはまだキャリアが浅いから、そんなに色んなケースを見たわけじゃないわよ」
そっか、という千尋の声に、もっともっと色んな仕事を熟したい、という熱望が胸に湧く。
わたしはやっぱり、働きたい。
仕事が好きなんだ、ということをこういう時に実感するのだけど。
「でも、なんだかショックだわ。
お姉さんのところまでって思うと」
「私もよ。これから結婚しようっていう妹に、夫婦の現実なんて見せないで欲しいわ」
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