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本堂で参拝する大勢の人に混じって、わたし達もお賽銭をし、手を合わせ、祈った。
ちらりと緒方君を見ると、わたしより少し長く手を合わせていた。
長い睫毛に胸をどきんとさせられて、わたしは慌てて目を閉じた。
「何をお願いしたの?」
遊歩道のようになった道を歩きながらわたしは緒方君に聞いた。
緒方君は、クスリと笑う。
「さあ、なんだろうね」
はぐらかしたわね。
うーん、もっと知りたくなるじゃない。
軽く睨んでみせたわたしに緒方君、クスクスと笑って言った。
「そう言えば、ここは何をお願いするか、知ってる?」
上手く逸らされた、と思いきや。
「……縁結び」
なんだか、ど真ん中に攻め込まれた感じがするのは、気のせい? ちょっと構えてしまう。
そういえば、緒方君は、彼女はいるの?
フッと浮かんだ、浮かんでしまった疑問に、胸に痛みが走った。
なんで、こんな初歩的な疑問、今まで思いつかなかったの?
そのことを話題にする為にそんな質問?
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