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「ありがとう、緒方君。
すごく楽しかった。わたし、また頑張れる」
緒方君は、運転席から少し身を乗り出してふわりと笑った。
「それなら良かった」
わたしの胸を掴むような柔らかな笑顔と声に、自然と笑みが浮かんでしまう。
「その笑顔、また見せて」
緒方君はサラリとそんなことを言ってわたしをドキンとさせる。
じゃあ、わたしもお返し。
「また、誘ってくれたらね」
どんな反応する? と思ったけど緒方君は冷静に。
「はい、お誘いしますよ」
もう。それじゃ本心が分からない。
でも、まだ二人とも分からないのかもしれない。
互いの、距離の取り方。
もっと、近づいていいのか。
もう少しこのままの距離を保った方がいいのか。
若い時と違うから。
がむしゃらに手を伸ばすことができない。
自分の感情も、どう読んでいいのか分からない。
リスク。そうね。年を重ねた分だけ、リスクを知っているから。
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