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「ここまで送ってくれて、ありがと。
また連絡するわね」
そう言って車から降りようとした時。
クッと腕を掴まれた。
予想外の緒方君の行動に、わたしはびっくりして振り返る。
緒方君?
アーモンド型の、綺麗な目が真剣な色を見せている。
澄んだ黒い目に、わたしの顔が映りそう。
「どうしたの?」
ドキドキする鼓動がどんどん加速して、声が震えそうだった。
「一つ、聞いてもいい?」
どきん、という大きな拍動に震えそうになった。
わたしは固唾の呑んで、
「なに?」
緒方君の言葉を促した。
「昨日、翠川さんが僕に電話をしてきたのは、精神科医としての僕を頼ってくれたから?
それとも、僕を一人の男として頼ってくれたから?」
ずきゅん、という音を聞いた気がした。
心臓を、撃ち抜かれたかと思ったわ。
どっち?
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