カルテ9 深大寺

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 実は、自分でも分からないの。 ううん、昨日のあの時点では、どちらとも断言できなかった。 昨日の私では、半々くらいだったかもしれない。  でも、今は――、 「今は、教えない。 次に会った時に。 また誘ってくれるんでしょう?」  一瞬、緒方君の切れ長の目が大きくなった。 そして、アハハと笑う。 「参りました」と緒方君はわたしの腕を掴んでいた手をゆっくりと離した。 わたしは解放された手をすっと伸ばして緒方君の頬に添えた。 「誘うのも、約束?」  緒方君の優しく笑う目がわたしを見つめている。 「そう、約束よ」  互いの顔が、自然とそっと近づいて。 それは本当に自然に。  こんなキス、久しぶりだった。 重ねた唇の感触は緒方君の全てを物語る。 柔らかくて、優しかった。  ずっと、ずっと。
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