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内容証明?
「少し前に、菊乃の元婚約者だった弁護士の使いだっていう男がここに来て、そんなとんでもないこのを置いていったわ」
書類に目を落とし、サッと目を通したわたしの心が、凍りつく。
「慰謝料5000万、請求……?」
震える声で読み上げたわたしに蓉子先生が言う。
「菊乃の元カレ、昨日ここに来たそうね。
相手方の代理人になったって?」
血の気が失せる、とはまさにこの事か。
書類は、わたしが抱える案件、あの、近藤恵果さんに対する慰謝料請求の内容証明だった。
まさか、こんな方法に出るなんて。
しかも、こんな早く。
昨日の今日じゃない。
今日、これから仕事を終えた恵果さんに会いに行く約束を取り付けていた。
これからのことを話し合う為。
そして何より、ご主人の‘病気’を何故話してくれていなかったのか。
それを聞かなければいけなかった。
それを、こんな……。
昨日の玲さんを思い浮べて、わたしの背中がゾクリと冷たくなった。
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