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『でもね、恵果さん、哀しいし、ショックなのも分かるけど、泣いていても事は進まないのよ。
これからちゃんと話してくれたら、わたしもなんとかしてみせるから』
なんとかしてみせる、とは言ったものの。
そんな方法、今は全く思い当たらない。
ともかくあの玲さんがこの先どう出るか、を考えると不気味で仕方ない。
でも今は――、
携帯を確認した瞬間、胸に温かな感触が拡がった。
緒方君からのメールが入っていたのだ。
おはよう、から始まる文字を見るだけで、どうしてこんなに心が安らぐの。
深呼吸してわたしはそのメールを開いた。
内容は、昨日の事は冒頭に簡単なお礼一文が添えられたのみで、他はすべて仕事のことだった。
わたしは夕べ、緒方君にメールをして、相手方に弁護士が付いた旨、そして高額な慰謝料請求が発生したことを報告していた。
もちろん、お礼と、楽しかったことを伝える言葉も添えて。
緒方君はそのわたしからのメールを受けて色々調べてくれたようだった。
余計な内容を省いた簡略的なメールに、わずかな落胆が心の隅っこに湧きはしたけれど、緒方君の優しさは胸に染みた。
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