111人が本棚に入れています
本棚に追加
「いや、アイツ、前回の出産が帝王切開で今回は最初から要観察だったんだ。
それが今日の検診であまり状態が良くなかったらしくてとにかく家に帰らずこのまま入院しろって言われたらしい」
そうだったの、と息を呑んだわたしに、遼太は話しを続けた。
「それをアイツ、子供が気になるから一度帰らせてくれって頼み込んで、すぐに病院に戻るっていう約束で帰らせてもらって、その途中で倒れてた菊乃を見つけたってワケだな」
「ひよりちゃんたら……」
言葉の継ぎ穂が見つからなかった。
本当に、ひよりちゃんは自分のことを顧みず、わたしの為に動いてくれていた。
そう思うと、胸が一杯になった。
ここで何を言っても、どんな言葉も安っぽい薄っぺらなものになってしまう。
黙ってしまったわたしに遼太が、フッと笑った。
「お前に、似てるだろ?」
「え?」
思わず聞き返した。
「わたしと、誰?」
「お前と、ひよ」
わたしと、ひよりちゃん?
あまりにも意外な言葉に、わたしは何と言っていいか分からなかった。
到底、似てるとは思えない。
共通点も見あたらな――、
最初のコメントを投稿しよう!